酸化還元分析装置・デザイン開発

製品企画/販売:(株)ウイスマー  開発/製造:KDクロート(株)

2019年1月、ご依頼をいただいたテーマは「血液を分析して抗酸化レベルを測定する医療用機器」
基本レイアウトなどは概ね決まっているという前提からスタートです。

【デザインアプローチ】最初の打合せ時に、製品を理解するため、血液検査を実施してもらい製品をどのよ うに使用するのか確認しました。この時に、作業手順を良く観察し、改善点を協議し デザインに反映できることを検討します。ここから、製品デザインはスタートしています。 

続いて以下の3点を確認します。
【ターゲット】
医療機関の研究者  【使用環境】医療、研究機関の検査室
【生産数量】100台/年間
生産数量は製品の材質と加工方法を決める 要因なので、慎重に確認します。  今回の製品は、年間生産数量は100台という設定でしたが、「ランニングコスト」と「形状の 自由度」で優位なインジェクション成型に決定しました。私のデザインの進め方は、アイディアが限定されるのを避けるため、事前にイメージを 固定することはありません。デザインを進めながら自然に任せるのが私のスタイルです。

【デザインコンセプト】医療の現場では、多くの女性が活躍しているので、女性にも好感を持ってもらえる製品にしたいと考えました。機能性重視の無機質な製品でなく、「もっと身近なもの」に感じられるもの。小動物が、そばに居る様なイメージです。今回の製品コンセプトは「ペットの様な分析装置」としました。

【リアルな開発の現場】製品開発では、開発を進めるうちに当初の仕様と変わって行く事が多々あります。 変更点を机上論で進めて行くと、スタッフが個々に「バラバラな製品イメージ」を持って しまう状態になり、予期せぬ障害につながりかねません。 スタッフのイメージを共有するためには、「ラフモデル」を製作して、現物を確認しながら 開発を進める事が確実な方法です。 現場では、ラフモデルを使いながらこんな風に協議されます。 Aさん「その部分をこう配置したらどうだろう?」 Bさん「そうすると、この部品を置くスペースが厳しいですね」 Cさん「じゃあ、これをこっちにずらして、こう配置にしたらどうだろう」 全員「使い勝手も良いし、コンパクトだね、それで行こう、、、、」 と言う様な感じです。 スタッフ全員が、納得して開発を進める事が何より重要です。

【イン・マシーンデザインとノン・マシーンデザイン】製品の中に、機械、基板、ディスプレイ、電気部品などが実装されたイン・マシーンデザインは、各部品のレイアウトが、製品デザインに大きく影響するので大事な段階です。 試行錯誤して検討するには、「ラフモデル」の使用は、大変に有効な手段となります。

【基本デザインの決定】事前に仕様や部品レイアウトについて検討を重ねていたため、基本デザインは好評のうちに決定する事ができました。
私がデザインプレゼンする時に心掛けている3点をお話します。
1.決定権のあるトップに同席していただくこと。
2.プレゼンに参加している全員の意見を聞くこと。
3.トップには最後に発言していただくこと。

【仕様のブラッシュアップと設計調整】基本デザインの決定後は、設計との調整に入ります。
今回は、サイズダウンのためにモニターサイズの変更を行いつつ、薬剤容器の収納数を増やすなど、最後までより良い仕様に向けての調整が行われました。

【製品完成】今回は、製品の外観デザイン(パネル表示デザインは含まず)と、パンフレットをデザインしました。かなり高度で専門的な仕様ですが、親しみやすく使い勝手の良い製品に仕上がりました。

【開発を終えて】1月中旬から実務がスタートし、10月中旬には製品として発売する事ができました。 製品デザインについては、関係者の皆様からも評価していただき、デザイナー として嬉しい限りです。
今回も、より良い製品にするためにご尽力いただいた関係者の皆様に 感謝申し上げます。
この製品が、先制医療への架け橋になってくれる事を願っております。

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